レンズを通して見たFC町田ゼルビアのこと


by abikozelvia

幻の多摩ダービー

多摩ダービーが開催されました。

4月11日の土曜日。武蔵野市をホームタウンとする横河武蔵野FCと、FC町田ゼルビアの対戦である。前売りでは「東京ダービー」と宣伝されていたが、多摩ダービーの方が良いと思う。どのみち23区内からの、「両チームに関係のない一般入場客」はほとんど期待できない。それならば、多摩ダービーにした方がまだ関心を集められるのではないかと思う。なによりも、多摩ダービーは「史上初」と思われる。FC東京も東京ヴェルディも、ホームタウンは「東京全域」である。ヴェルディは稲城によみうりランドがあり、本拠地としているので多摩のイメージが強いが、登録上は東京全域がホームタウンである。また、佐川急便大阪と合併してSAGAWA SHIGA FCとなった佐川急便東京も、はっきりしないけれども、佐川急便東京と言うくらいだから東京全域がホームだったのだろう。多摩地区がホームなら「佐川急便多摩」を名乗っていたのではないかと思うからである。ということは、JFL以上における多摩地区をホームタウンとするチーム同士の対決は、少なくともJリーグ、JFLと言った制度ができた以後の十数年の間では、史上初の多摩ダービーのはずだからである。せっかく「史上初」を名乗るチャンスだったのに、横河武蔵野さんはもったいないことをしたものである。こうなれば、次回の対決はゼルビアが、「史上最後の多摩ダービー」を名乗るチャンスである。ただし、ゼルビアが昇格すれば、という条件付きで、少し雲行きは怪しいのだけれども。


本番の東京ダービーの前に、前座試合として両チームのジュニアユース、U-13によるジュニアユースダービーマッチが開催された。今回はこちらの話。

U-13と言うけれども、要するに中学1年生同士の対決である。普通の学校では4月7日頃が入学式だろうから、入学式を終えて一週間もたたないという、超ぴかぴかの1年生対決であるわけだ。というのは学校を基準にしてみた話で、両チームの内容には大差がある。横河武蔵野にはジュニアチームがあるので、U-13のチームはU-12のチームが1学年あがったチームと言うことになり、チームとしてもまとまっているし、訓練も継続して行われているわけで、3月31日に対戦していればU-12のチームとして同じ力を発揮したであろうチームである。一方のゼルビアの方は、ジュニアがないので本当の新入団選手チームとなる。もちろん、4月1日から集まったと言うこともないだろう。大部分の選手は3月か、あるいは2月から練習に参加しているだろうし、全くの寄せ集めと言うことはないはずなのだが、想像に過ぎいけれども、2月、3月は練習に参加していても、新チームとしてのまとまった練習は少なかったはずだし、メンバーの参加状況も様々だったろう。
このような事情は想像なのであるが、試合を見ると「そのとおり」なのかなと思えてしまう。「中学生のできあがったチームvs小学校を卒業したばかりの寄せ集めチーム」と言う図式そのままの試合展開。結果は1-5で横河武蔵野が圧勝しているが、ずるずると大敗せずによく頑張って1-5にとどめたというところ。
まず走りからして全く違う。横河武蔵野のしっかりした走りに対し、ゼルビア側は子供の、ちょこちょことした膝の伸びない走り方をしている。それは早さに明瞭に表れて、すべての場面で走り負けていたと言ってもよい。後からきても追いつかれ、追い越されてしまっている。またボール扱いでも大差があり、追いつかれれば必ず、簡単にボールを奪われてしまっていた。後で考えれば、よくこれで1-5で収まったものだと言うくらいに、大差のある内容であった。トレーニングを積んで基礎訓練ができている横河武蔵野と、ボール遊びをしてきて小技はうまいけれども体力のないゼルビア、の違いである。

ただし、「だからそれじゃあだめなんだ」という話ではない。
ジュニアスポーツの始動において、現在考えられている理論としては、少年期におけるスキルの向上が大切だとされている。コーディネーショントレーニングの重要さ、いわゆる「タッチのよさ」を生み出すのは、少年期の遊びにあると考えられている。柔軟性、巧緻性、調整力など、教えてもなかなか教えられないこれらの感覚は、体の成長がピークを迎えるまでに行われておく必要がある。女子で10.8歳、男子で12.5歳くらいが平均のはずだ。続いて、骨の骨密度が最大になる、成長がほぼ完了したと思われる時点までの間は、持久力のトレーニングを行うことができるようになる。これが、男子で15歳、女子で13歳と言われている。それ以降に、筋力アップ等のトレーニングを行うのがベストとされている。

つまり男子で言えば、小学生の間は遊びを中心に様々な能力の開発期であり、中学生の期間は加えて持久的トレーニングが実施され、高校生になると筋力アップ等のトレーニングを開始するのが適切であるというわけだ。

よく中学校では、「1年生はまず体力作りだ」と言うわけで、入部したら腹筋・背筋・腕立て・ランニングと、鍛えに鍛えて(ただしトレーニングとして効果的でない未熟な訓練が99%だと思う)、夏休み頃からやっとボールをさわらせるなどと言うことが、ありとあらゆる部活で行われていないだろうか。最悪低の選択と言うことになる。まず入部してきたなら、一日でも早くボールにさわられて、少しでも長い時間、少しでも多く、遊びの要素を取り入れたコーディネーショントレーニングを行わねばならない。中学1年から始めたのでは手遅れに近いのだが、多少でも能力を開発するためには、一日でも早くボールをさわらせねばならないのである。そして、一通りボール扱いができるようになってから、ゲームなどの持久的運動を取り入れていくことになる。

「1年生はまず体力作りだ」と思っている部活の顧問がいたら、代々木の岸記念体育館に日本体育協会があるので、いって聞いてこいと、いや聞いてきていただきたいと、お伝え願いたいものである。

ということを踏まえて、ゼルビアのジュニアユースを見てみると、大いに遊んでいて、テクニックを磨いていて、たっぷりとコーディネーショントレーニングが行われていた、理想的な1年生に見えるわけである。1-5と大敗であってもまるで気にする必要はない。大いに楽しみな1年生と見て、間違いはない。

というと、横河武蔵野の方はだめだめだと思ってしまうかもしれないが、けしてそうではない。まず横河武蔵野はJFLのチームであり、Jリーグを目指さずアマチュアでやっていこうとしているチームである。とすれば、横河武蔵野のジュニアユースはJリーグの予備校ではなく、ジュニアユースやユースというそれぞれの場面で結果を出すことを目的としている。その点では、正しいやり方をしているといえるだろう。「Jリーグを目指さないジュニアユース」などというと、これまただめだめに思われてしまうかもしれないが、実際問題としてJリーグを目指してJリーガーになれる子供は、ごくわずかである。さらに、Jリーガーになったとしても、成功できるのはごくごくわずかに過ぎない。1年か2年はJリーグチームと契約できて、Jリーガーという肩書きは手に入れられるだろうが、年俸5千万、1億ともらって10年もプレーできる選手は、ホントに極わずかでしかない。

正直、横河電機の社員になったり、ソニーの社員になってソニー仙台でプレーしたり、ホンダの社員になってHondaFCでプレーしたりすることを目指すのは、悪い話ではない。というより、大部分のJリーガーよりは生涯収入は多いのではないだろうか。Jリーグを目指すのはすべてのサッカー少年たちの夢だろうし、夢を目指していくのはすばらしいことであるが、すべてのジュニアやジュニアユースがJリーグの予備校となってしまうことは、果たして子供たちや、日本の未来にプラスになるのかというと、全面的に肯定する、訳にゆかないのが、実際のところだろう。



長い話になりましたけれども、ジュニアユースの多摩ダービー、1-5と言う結果以上に、楽しめる内容であったと言うことです。次回ゼルビアホームのジュニアユース多摩ダービーも、期待したいですね。
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by abikozelvia | 2009-04-21 16:10